記事作成日:2019年11月29日

近年はIHヒーターを導入している家庭も増えていますが、直火で調理できるガスコンロは魅力的です。キッチンでガスコンロを使用するためには、簡単に移動ができるガステーブルを導入するか、キッチンに埋め込むビルトインタイプのものを導入する必要があります。ここでは持ち運べるタイプのガステーブルの選び方を紹介します。ビルトインコンロとの違いや、選ぶときのポイント、おすすめのメーカー、実際に設置する際の注意点を解説しますので、検討中の方は参考にされてください。

(参考)
ビルトインコンロの選び方~ガス機器の専門家が解説

ガステーブルとビルトインコンロとの比較

簡単に移動できるタイプのガステーブル(以下、「ガステーブル」と表記します)とビルトインコンロには、どのような違い・特徴があるのか比較していきます。どちらもキッチンで、ガスを利用した調理器具という点では同じです。

ガステーブルはキッチンに用意されたスペースに置いてガス栓をつなぐことで使用できるタイプ。一方でビルトインコンロもキッチンに用意された場所に設置する点では同じですが、システムキッチンに埋め込んで利用します。最近建てられた住宅に設置されるシステムキッチンでは、ほとんどがビルトインコンロを採用しています。

ガステーブルとビルトインコンロは両方同時に導入はできずキッチンの種類によって、導入できるコンロが決まってきます。

設置場所と取り付け工事

ガステーブルとビルトインコンロでもっとも大きく異なる点は設置場所です。ガステーブルの場合には、設置した際にキッチンの天板と高さが合うようにテーブル設置用のスペースが一段低く確保されているだけなので、とてもシンプルな構成になっています。設置する際にも取り付け工事というほどのものはなく、確保された場所にガステーブルを置いて、ガスホースを元栓につないだら設置完了です。この手軽さは大きなメリットといえます。

一方でビルトインコンロはシステムキッチンの中に組み込む必要がありますので、どこにでも設置できるわけではありません。自宅のシステムキッチンに対して、購入する予定のビルトインコンロを組み込めるか確認が必要です。また、ビルトインコンロの設置は素人が行うことは難しいので、専門業者に依頼する必要があり、費用がかかります。

導入費用

導入するための費用を確認してみると、本体の価格はそれぞれ機能によって幅がありますが、同等の機能を持つ場合にはガステーブルの方が安価です。また、ビルトインコンロの場合には取り付け工事の費用も必要なので、導入費用全体としてはビルトインコンロよりもガステーブルの方が抑えられます。

メンテナンス性

キッチンはほぼ毎日使用するものなので、日常的なメンテナンス性、掃除のしやすさは重要です。

キッチンとコンロとの境目部分はガステーブルとビルトインコンロでメンテナンス性が大きく異なります。ビルトインコンロはシステムキッチンにしっかり収まるようになっているため、境目に汚れが溜まる機会は多くありません。そのため、日々のメンテナンスはそれほど手間がかかりません。一方でガステーブルは設置場所にただ置いてあるだけなのでキッチンとの間に隙間ができますし、そこに油汚れやゴミが溜まってしまいますのでビルトインコンロと比較すると日々のメンテナンスは少し面倒です。

ガステーブルを選ぶときのポイント

ガステーブルを選ぶときに注目すべきポイントについて確認していきます。間違えるとせっかく購入しても自宅で使えない場合がありますので、しっかり確認しておきましょう。

都市ガスかプロパンガスか

家庭用に用いられているガスは主に都市ガスとプロパンガスの2種類に分けられます。ガステーブルはどちらのガスを使用しているかによって、対応する機器が異なりますので、間違えないように注意が必要です。

自宅が都市ガスかプロパンガスかわからない場合にはガス会社に確認するのが確実です。もし家庭ですぐに確認したい場合には、自宅の外にガスボンベが置いてあるかどうかで判断できます。大きなガスボンベがあればプロパンガスですし、なければ都市ガスの場合がほとんどです。ただし、集合住宅で大きな1つのガスボンベを採用している場合には、プロパンガスであっても自宅の外にガスボンベが見つけられない場合があるので注意しましょう。

都市ガスとプロパンガスを間違えて、合っていない種類のガステーブルを利用してしまうと、点火したとしても、異常点火によるやけどや不完全燃焼によって発生する一酸化炭素中毒、またガステーブル自体が故障してしまうことも考えられます。

さまざまなリスクがありますので注意が必要です。取り返しのつかない事態になる可能性がありますので、きちんと確認して自宅で使っているガス種別に合った設備を購入しましょう。

設置スペースのサイズ

ガステーブル本体のサイズは大きく分けて3つに大別されます。基本サイズと呼ばれる60cm、コンパクトサイズの56cm、一口コンロサイズです。一口コンロサイズは一人暮らし用などでコンロが一口なので用途が限られます。

設置する部分の幅がどの程度あるのかを実際に計測し、60cm以上ある場合には基本サイズを選択するのがおすすめです。4cm程度ですがコンパクトサイズに比べると横幅に余裕が出ます。スペースの幅が56cm~60cmの間にある場合には、コンパクトサイズを選択しましょう。基本サイズと比べて少しスペースが狭くなりますが、機能的に差はありませんしスペース効率もよいです。設置スペースが56cm以下の場合には二口コンロを設置するのは難しいため、一口コンロを設置しましょう。

基本サイズとコンパクトサイズは差が4cm程度とそれほど大きくありませんので、見た目で判断するのは難しいです。間違えてしまうとせっかく買ったのに設置できないという可能性もありますので、きちんと幅を計測して購入するようにしましょう。

天板の素材

天板の素材はメンテナンス性、見た目のきれいさ、耐久性、価格など多くの項目に影響を与えるため、どこでバランスを取るのか決めていく必要があります。天板の種類としては価格が高い方から、ガラストップ、コーティングホーロー、ホーローの3種類に大別されます。コーティングホーローはメーカーによって呼び名やコーティング内容が異なりますが、大きな性能差はありません。

ガラストップは天板の表面が特殊技術によってガラス素材が使われており、コーティングではないため耐久性が高くその性能を長く保つことができます。透明感があり見た目も美しく、手入れが簡単です。一方で高価でガラスなので重いものを落とした際に破損する可能性があるなど注意が必要です。

次にホーロー用の鋼板にさまざまなコーティングを施したものが用意されています。コーティングとしては、ガラス、クリスタルコートなどさまざまなものがあります。特徴も細かくはコーティングの種類によって異なりますが、表面加工されているので手入れが簡単で重いものを落としても割れることはありません。色のバリエーションも多いので、好みのデザインを選べる可能性が広がり、ガラストップに比べて価格が安いことも大きな特徴です。一方で表面の塗装がはがれてしまうとそこから錆が進むことがあります。

もっともリーズナブルなのがホーロー用の鋼板を用いた天板で、熱や傷に強く耐久性に優れていますが、焦げがこびりつきやすかったり、表面から錆びてしまったりするため、使用には注意が必要です。

お手入れのしやすさ

毎日のように使用するコンロなので、お手入れのしやすさは重要な要素です。天板部分のメンテナンス性は素材の項目で確認したので、それ以外の項目について確認していきます。

注意すべきポイントは鍋やフライパンを置くゴトク(五徳)の部分や、グリル部分のメンテナンス性です。ゴトク部分に関して鍋から噴きこぼれた場合に受け止めてくれる汁受け皿がついているタイプは部品の数が多いためメンテナンスするときには面倒です。最近はゴトクの2点を取り外して清掃すればよい汁受けレスタイプが主流になっています。また、グリル部分のメンテナンス性については、焼き網がフラットでフッ素コート加工されていること、グリル内部に取り外し可能な汚れカバーがついていること、グリルの受け皿にクリアコートが施されていることなどが挙げられます。

コンロ・グリルの調理機能

料理をするときに、コンロやグリルに便利な機能がついていると、レパートリーが広がりますし、難しい料理であっても手軽に作れるものが増えます。

コンロにはタイマー機能や自動で火加減をコントロールしてくれる機能があります。また、グリルにはさまざまな機能があり、加熱が片面か両面か、またグリルが単純な網だけでなくさまざまなプレートが付いているかどうかなどに注目しましょう。また、メニューを選択すれば自動で火力調節、終わったら自動で消火してくれるので焼き過ぎる心配もない、便利な機能を搭載しているものもあります。

いざというときの安全機能

ガスを使うキッチンでは、使い方を間違えると火傷や火事につながってしまう可能性があるため、安全機能が搭載されていることは重要です。代表的な機能としては、鍋無し検知、ゆれ検知消火、コンロ消し忘れ消火、高温異常加熱検知、立ち消え安全機能などがあります。
これらの機能を過信してしまうことはよくないですが、どうしても調理中に子供の面倒を見なければいけなくなったり、急な来客に対応しなければいけなかったりしてキッチンを離れてしまう可能性もあります。そのまま忘れてしまったときに、安全機能が搭載されていれば不幸な事故を防いでくれる可能性が高くなります。

火力が強いバーナーの位置

ガスコンロを設置する際には、火災予防条例で定められているようにガスコンロと可燃性の壁の位置を15cm以上離す必要があります。二口以上のコンロには炒め物用に片方の火力が高くできるものがありますので、安全のために壁から離れた側に火力が高いものを配置しましょう。自宅のガステーブル置き場の右側に壁がある場合には左側に火力が強いコンロを、逆の場合も同様に考えて設置しましょう。

ガステーブルを選択する際には、紹介してきたようなさまざまなポイントに着目する必要があります。日常の便利さや安全性につながる項目なので、価格とのバランスを考慮しながら選択するのがおすすめです。

メーカー別の特徴

各社さまざまな種類を発売していますので、基本機能は大きく変わりませんが、独自機能もありますのでメーカー別の特徴を解説します。

リンナイ

リンナイは特に品質にこだわっており、その信頼性の高さには定評があります。独自機能としては、天板の温度上昇を抑えることで焦げ付きなどを防いでくれます。また「ヒートオフ機能」によってお手入れが簡単になり、「スモークオフ機能」でグリル調理時に気になる煙やニオイをカットしてくれるのは魅力的です。ガラストップ天板を選択すると、ドイツのガラスメーカー製のフレームレス天板が採用されるため、見た目も美しいです。

パロマ

パロマは国内だけでなく海外でも活躍するメーカーです。独自機能としては、天板のホーロー素材に対して2層のガラスコートをコーティングした「ハイパーガラスコート」によって、さらに衝撃耐久性とひび割れ耐性を向上しています。また、つけっぱなしの火を自動消火してくれる「さらに安心モード」が搭載されているため、安全性能も高いです。

ノーリツ

ノーリツの天板にも独自技術が採用されており、「親水アクアコート」により水洗いだけでガスコンロをきれいにでき、さらに金属フレームがついているため、耐衝撃性を高めています。また、グリルのメンテナンス性を向上させる「マルチグリル」を採用するなど、日常の使いやすさを追求しています。

メーカーごとに大きな性能差はありませんが、独自機能を採用したい場合にはそれぞれのメーカーを採用しましょう。

ガステーブルの設置工事

ガステーブルは難しい工事が必要ないため自分でも設置が可能ですが、まずは専門業者に相談することをおすすめします。使用しているガスの種別や壁との位置関係、ガステーブルのサイズ、ガス配管の形状などさまざまな点を1つでも間違えると設置できなかったり、事故につながったりしてしまいます。

設置するガステーブルが決まったら、工事費を含めた見積書を作成してもらいましょう。

安価な設定で掲示してくる業者がいるかもしれませんが、きちんと適切な処置が行われなかったり設置工事日の調整が難しい場合があります。ガスは適切に処置をしないと事故につながる可能性があるため、安心して任せられる専門業者に依頼しましょう。